この記事の内容
- 賃貸のクリーニング代が高すぎる理由2選
- クリーニング代を払わなくていいケース2選
- 退去時のクリーニング費用を抑える方法
突然ですが、こんな疑問を持っていませんか?

賃貸のクリーニング代が高すぎるけど、払わなくちゃいけないの?
退去する際、高額なクリーニング代を請求されことがありませんか?筆者は、部屋がキレイな状態にもかかわらず一律5万円の費用を請求されたことがあります。正直、疑問ではありましたが何も疑わず払ってしまいました。しかし、不動産大家になった今考えてみると、当時の費用はおかしいことが分かりました。僕の経験した、高額なクリーニング代を請求されて困っている方は多いと思います。
そこで当記事は「賃貸のクリーニング代が高すぎる!払わなくていい2つのケース」を現役の不動産大家が解説します。この記事を読めば、退去時に負担すべき内容が分かるので、将来の退去費用を節約できます。



読み終わる頃には、退去時の費用トラブルを防げる知識を身に着けています。
読むと分かる3つのこと
- 賃貸のクリーニング代が高すぎる理由2選
- クリーニング代の支払いが不要な2つのケース
- 退去時のクリーニング費用を抑える方法


運営者 しょう
不動産大家×Webライター
・東京23区の不動産大家
賃貸経営4年目・年間家賃300万円
・保有する資格
ファイナンシャルプランナー2級・証券外務員Ⅰ種
SNSのX(@syo_digital_oya)で部屋探しに役立つ情報を発信しています。
気になる記事があれば、目次をタップするとすぐに本文が読めます。
賃貸のクリーニング代が高すぎる
「賃貸のルームクリーニング代が高い」そう思ったことはありませんか?そんなルームクリーニング代の相場と、高い理由を3つご紹介します。自分のクリーニング代はどうなのか、相場と比較しながらご覧ください。
クリーニング代の相場
賃貸の退去時に支払うクリーニング代の相場は、物件の大きさや地域、物件の状態によって大きく変わります。一般的に、部屋の数が多く広いほうがクリーニング代は高くなります。
クリーニング代の相場は以下の通りです。
部屋のタイプ | ルームクリーニング代の相場 |
---|---|
1R | 20,000円〜30,000円 |
1K | 25,000円〜35,000円 |
1DK | 30,000円〜40,000円 |
1LDK | 35,000円〜45,000円 |
2K | 40,000円〜50,000円 |
2DK | 45,000円〜55,000円 |
2LDK | 50,000円〜60,000円 |
基本的なクリーニング代は表にある通りですが、タバコの匂いやカビが発生している場合、追加料金の発生することがあります。また、不動産会社によってはエアコンや水回りの清掃料金を請求してくる場合があります。



地域や不動産会社によって価格は変動するけど、大体の相場を知っておくのは大切です。
クリーニング代が高い理由
クリーニング代の相場をみてどんな感想を持ちましたか?「やっぱり高いと思った」「自分でやらなくて済むからいっかな」色々な意見があると思います。ここではそんなクリーニング代が高い理由を2つ紹介します。
徹底的に清掃するから
ルームクリーニングは、床や壁、天井の汚れはもちろん、キッチン、バスルーム、トイレなど、部屋の隅々まで徹底的に清掃します。
専門性の高い清掃
ルームクリーニングは、家庭にある掃除機で雑巾などでは取れない汚れやニオイを消すために、大型の機械や化学薬品を使います。部屋のあらゆる個所を清掃してピカピカにするので費用が高くなるわけですね。



清掃時に大型の機械や、薬品を使うので費用が高くなります。
クリーニング代が高い理由は、次の入居者が気持ちよく暮らすために徹底的に部屋をキレイにするためです。また、清掃する場所は、全ての居室内で範囲も広いこと、専門の機材や薬品が必要なのが理由です。クリーニング代の高い理由をみてどう思いましたか?次の章では、クリーニング代が国や裁判所でどのように解釈しているのか見ていきましょう。
退去費用を安くする方法を詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。


クリーニング代を払わなくていい2つのケースを解説!
クリーニング代は高くても払わないといけない?そんな疑問を持つ人も多いでしょう。この章では、クリーニング代を払わなくていい2つのケースをご紹介します。自身の契約が、2つのケースに当てはまるのか考えながらご覧ください。
特約にクリーニング代の記載がない
賃貸契約書の特約に「ルームクリーニングの記載」が無ければ、費用を負担する必要はありません。ただし特約に記載がなくても、退去時にクリーニング代の支払いを請求されたらどうしましょう。そんな時は、契約書をもとに不動産会社または大家さんと話し合うことが必要です。



ここでyahoo知恵袋の相談内容を紹介します。同じようなケースの人は、ぜひ参考にしてみてください。
相談の概要は以下の通りです。
- 一人暮らし1kタイプの部屋
- クリーニング代:30,000円
- シールの除去費:3,000円
- フローリングの補修:5,000円
- 壁紙の補修:5,000円(指摘後に削除)
クリーニング代は賃貸契約書には載ってないとのことでした。
相談内容のベストアンサーはこちらになります。
総合的な不動産会社に勤めています。
最も大きいクリーニング代は支払う義務はありませんね。
クリーニング代というのは契約書や重要事項説明書などの書面に記載があって初めて支払い義務が生じるものです。
国交省のガイドライン(法的な根拠ではなく、あくまで目安程度)や、様々な裁判事例から原則はクリーニングするための費用は賃料に含まれているものとされています。
なので、通常は契約書や重要事項説明書に明記して別途支払い義務を生じさせます。ちなみに説明や明記すれば暴利的でなければ有効になるという最高裁の判例があります。
(クリーニング代で30,000円は1Rだとしても、まだ安い方ですよ。)ということで30,000円は断れます。
他はケースバイケースですが、
フックシールは意外とめんどくさいので人件費を考えて3,000円ぐらいは支払ってください。フローリングは何とも言えませんが、気づかないうちに剥がしていることもあります。
引用 Yahoo!不動産
退去する時に引っ越し業者がいつの間にか傷をつけていたということもあります。
相談では「賃貸契約書にクリーニング代の記載がない」ので払う義務がないのが分かります。しかし、最近の賃貸契約では、クリーニング代について記載のないケースはは少ないのが現状です。もし、記載があるときでも担当者に「国土交通省のガイドラインでは貸主負担ではないでよね」と質問するのもいいでしょう。



クリーニング代が値引きできなくても、相談すれば他の費用を値引きしてくれる可能性は十分にあります。
そもそもルームクリーニングが必要ない
定期的に掃除をして部屋の状態がキレイであれば、クリーニングをしないことがあります。これは、通常に使用した範囲内で退去した際に有効な方法の1つです。


画像引用 国土交通省



図にある緑の部分の通常損耗なら、費用は家賃の中に含まれているのが分かります。
賃貸のクリーニング代が高すぎるときの見解
この章では、賃貸のクリーニング代が高すぎるときの国土交通省(国)の見解と、裁判所の事例をご紹介します。
国土交通省のガイドライン


引用 国土交通省
国土交通省では、賃貸の退去時の費用負担などについての基準を「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」として公表しています。ガイドラインには、クリーニング費用の負担について記載されています。
ガイドラインの内容をまとると
- 費用の負担は原則貸主とする
- 特約で定める場合は特約に従う
- 特約にする場合は3つの要件を満たすこと
【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
国土交通省ガイドライン
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて
認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
ガイドラインのクリーニング代は、まとめると以上のようになります。原則は貸主が負担すべきだけど、特約で双方が同意している場合は、特約が優先つまり有効だよという判断です。



要は契約書に特約があって、3つの要件にあてはまっているとクリーニング代を払わなければなりません。
契約する際は、不明な点があれば事前に担当者や、大家さんに質問して確認しておくのがおすすめです。「なんとなく大丈夫そう」では、高額なクリーニング代を請求されても仕方なくなってしまう可能性があります。自分を守るためにも、契約内容をしっかり目を通しておきましょう。
東京地方裁判所の判決
クリーニング代で「入居者」と「貸主」が争った裁判事例をご紹介します。結論は、特約にある費用負担は合憲つまり違法でない判決がされています。
裁判事例の概要
- 東京地方裁判所判決 平成21年9月18日
- 第一審・武蔵野簡易裁判所判決
- 〔敷金 5万6,000円 返還 1 万7,750円〕
クリーニング代の特約は有効であり、退去者が請求した敷金の返還はできない。
裁判所の本文はこちらです。かなり長文なので気合を入れて読む必要があります。
裁判判決の本文(超長文)クリックすると読めます。
[事例 36] 清掃費用負担特約並びに鍵交換費用負担特約について消費者契約法に違反しないとされた事例
東京地方裁判所判決 平成21年9月18日
第一審・武蔵野簡易裁判所判決
〔敷金 5 万 6000 円 返還 1 万 7750 円〕
1 事案の概要(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)
賃貸人Yは、賃借人Xに対して平成19年5月27日、本件貸室を契約期間2年、賃料月額5万6000円(他に共益費2000円)、敷金5万6000円とし、賃借人Xは賃貸人Yに同日敷金を支払うと共に、本件貸室の鍵交換費用として1万2600円を支払った。
本件賃貸借契約は平成20年2月17日に終了し、賃借人Xは賃貸人Yに対して本件貸室を明け渡したが、賃貸人Yがハウスクリーニング費用2万6250円を負担する特約(清掃費用負担特約)に基づいて敷金から2万6250円を控除し、また、賃貸人Yが入居時に貸室の鍵交換費用1万2600円を負担する旨の特約(鍵交換費用負担特約)に基づいて1万2600円を取得したことから、賃借人Xはこの2つの特約は有効に成立していないか、成立していたとしても消費者契約法10条により無効である、仮に無効でないとしても消費者契約法4条2項により取り消されたと主張してこれらの返還を求めて提訴した。
2 判決の要旨
これに対して裁判所は、
(1)清掃費用負担特約は、合意されていないとして2万6250円の敷金の返還を認める。
(2)鍵交換費用負担特約については、成立するとして請求を棄却した。
第一審・武蔵野簡易裁判所は、敷金の返還は認める判決をしました。
これに対して賃貸人Yが控訴し、これに対して裁判所は、
(1)清掃費用負担特約については、契約書等には賃借人が契約終了時にハウスクリーニング費用2万5000円(消費税別)を賃貸人に支払う旨の記載がいずれにも存在すること、賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書には費用負担の一般原則の説明の後に、「例外としての特約について」と題して、ハウスクリーニング費用として2万5000円(消費税別)を賃借人が支払うことが説明されていること、仲介業者が口頭で説明したことは認められること等からすれば、料金2万5000円(消費税別)程度の専門業者による清掃を行うことが明らかであるから、契約終了時に本件貸室の汚損の有無及び程度を問わず、賃貸人Yが専門業者による清掃を実施し、賃借人Xがその費用として2万5000円(消費税別)を負担する旨の特約は明確に合意されているものということができ、特約の合意は成立している。当該特約は賃借人にとって不利益な面があることは否定できないが、特約は明確に合意されていること、賃借人にとって退去時に通常の清掃を免れることができる面もあること、その金額も賃料月額5万6000円の半額以下であること、本件貸室の専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであることからすれば当該特約が賃借人の利益を一方的に害するとまで言うことはできないので、当該特約は消費者契約法10条違反であるとはいえない。
同様に、賃貸人の代理人である業者が賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明の際に当該特約について「清掃費用は賃貸人が本来負担するものであるが、賃借人に負担をお願いするために特約として記載している」と説明したことが認められることから、消費者契約法 4条 2 項違反の行為もないので、クリーニング費用についての賃借人Xの請求は認められない。
まとめると、控訴審では第一審の請求が棄却され、クリーニング代の請求は妥当とし返却を却下されました。
(2)鍵交換費用負担特約については、宣伝用チラシ、重要事項説明書に記載されていること、契約締結時に仲介業者が口頭で説明していること、賃借人Xは鍵交換費用を含めて契約金を支払っていることからすれば鍵交換費用を負担する旨の特約が明確に合意されているものということができ、要素の錯誤があったと認めるに足りる証拠もない。そして、鍵交換費用負担特約は特約そのものが明確に合意されていること、鍵を交換することは前借主の鍵を利用した侵入の防止ができる等賃借人Xの防犯に資するものであること、鍵交換費用の金額も1万2600円であって相応の範囲のものであることからすれば、賃借人にとって一方的に不利益なものであるということはできないから当該特約は消費者契約法10条違反ではない。また鍵交換費用について、賃貸人が本件ガイドラインに沿った内容と説明したと認めるに足りる証拠もなく、消費者契約法4条2項違反でもない。
(3)以上から、原判決における賃貸人Y敗訴部分を取り消した上で賃借人Xの請求を棄却した。
まとめると、クリーニング代の特約は有効で退去者が請求した敷金の返還はできない。



第一審では入居者が勝ったけど、控訴審では不動産側の主張が認められる結果になりました。
このように、クリーニングに関する入居者と不動産会社が争った裁判を紹介しました。ここで分かるのは特約の有無が、費用を負担するかの分岐点ということです。そのため入居前に特約の内容しっかり確認するのはとても重要ですね。「不動産屋の人が言うから」とか「よく分からないけど多分大丈夫でしょ」と適当に契約してしまうと、退去時に後悔してしまうので気を付けてください。
賃貸のクリーニング代が高すぎるときのQ&A4選
賃貸のクリーニング代が高すぎる時のQ&Aを4つご紹介します。他に気になることや聞きたいことがある人は、公式ラインかお問い合わせから気軽に相談してください。
入居時のクリーニング代は払う必要がありますか?
- 入居時のクリーニング代は払う必要がありますか?
-
入居時にクリーニング代を支払うかは、契約内容によって変わります。契約によっては、入居時に退去する際のクリーニング代を請求する不動産会社もあります。ただし、クリーニング代は一回の支払いで十分です。入居時と退去時に二度請求されたら、不動産会社に内容を確認しましょう。費用の負担については、国土交通省のガイドラインを参考にするのがおすすめです。
クリーニング代を払わないとどうなりますか?
- クリーニング代を払わないとどうなりますか?
-
クリーニング代の支払いを拒否すると、契約違反となって入居時に支払った敷金から差し引かれます。敷金で足りれば問題ないですが、足りなかった場合は不動産会社から追加の請求をされる可能性があります。
サインをしたら不利な特約でもすべて有効ですか?
- サインをしたら不利な特約でもすべて有効ですか?
-
入居者に不利な特約は、内容を理解して契約内容に合意していなければ有効とならないとされています。



回りくどい表現で分かり辛いけど、特約は基本的に有効でも、その内容をちゃんと理解していない時は無効になる可能性があるという意味です。
ガイドラインの本文はこちらです。
ガイドライン本文(長文)
建物の賃貸借契約は、借地借家法の適用があるのが原則であり、借地借家法が定める事項については、借地借家法の規定と異なる合意を規定しても、借主に不利な特約として無効となるものもあります。また、消費者契約法は信義誠実の原則に反し、消費者の利益を一方的に害するものは無効と規定しています。しかし、このような強行規定に反しない限り、契約自由の原則により、合意された契約内容は有効となり、賃借人に不利な特約がすべて無効になるわけでもありません。もっとも、賃借人に不利な特約を契約内容とする場合には、賃借人がその内容を理解し、それを契約内容とすることに合意しているといえるのでなければ成立しているとは言えません。また成立しても、賃借人にとって不利な特約である場合にはそれが有効であるとは限りません。原状回復に関する賃借人に不利な内容の特約は、近年の(最高裁の)判例も踏まえ、次のような用件を満たしておく必要があると解されます。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること



要約すると、特約は無効になる場合もあるけど、①~③の要件を満たしていれば有効になることがあります。
損害賠償額が契約書にあるときは有効ですか?
- 損害賠償額が契約書にあるときは有効ですか?
-
不動産会社と入居者の間で退去時の損害賠償額を事前に契約書に定めるのはできますが、常に有効とは限りません。



契約書にあるから損害賠償額は全額請求、ではなくて実際の賠償額によって変動するという意味です。
ガイドラインの本文は以下の通りです。
ガイドライン本文(長文)
契約の当事者は、損害賠償の額を予定し、契約で定めておくことができます(民法420条)。これを損害賠償額の予定といいますが、賃借人が賃貸借契約に関して賃貸人に損害を与えた場合に備えて規定するものです。ただし、民法90条並びに消費者契約法9条1号により無効となる場合もあります。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
従って、賠償額を予定してそれを契約しても、実損額によっては予定賠償額どおりに請求できない場合もあります
まとめ
解説は以上です。賃貸のルームクリーニング代は、不動産屋とトラブルになるケースが多いです。契約するときは「契約内容をよく確認」してから、サインをするようにしましょう。また、契約書類は退去するときに活用できるので、大切に保存しておくのがおすすめです。記事を読んだ皆さんが、クリーニング代で損しないことを心から願っています。最後までお読みいただきありがとうございました。



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